月初、銀行データと管理台帳を1件ずつ目で照合する”地獄”
不動産管理業では、毎月多数の入居者・取引先からの振込を、管理台帳と突き合わせる作業が発生します。振込名義が契約者名と微妙に違う、法人名が省略されている、金額が家賃と共益費で分かれて振り込まれる──こうした「ちょっとしたズレ」が積み重なり、月初の数日を丸ごと消費する作業になっていました。
「800件近い振込を、1件ずつ通帳データと台帳を見比べてチェックしていました。集中力が切れると見落としが怖く、結局同じ箇所を何度も見返すことになる。月初はこの作業だけで丸3日はかかっていました。」
「オーナー様への入金報告も、この照合作業が終わらないと出せないので、報告が後ろ倒しになりがちなのも悩みでした。」
金額のズレ・名義のゆらぎは、人間の目視チェックでは避けられないミスの温床です。かといって照合を雑にすれば、オーナーへの報告に誤りが出かねない。「正確さを保ちながら、時間を減らす」という一見矛盾したテーマが、この会社様の課題でした。
実施したこと:ズレを前提にした自動マッチングの仕組み
振込データと管理台帳、双方のフォーマットを確認
銀行から出力される振込データと、既存の管理台帳のフォーマットをそのまま活かせるよう、突合に必要な項目(金額・振込人名・部屋番号等)の対応関係を整理しました。
「一致」の定義をルール化し、自動マッチングを構築
金額の完全一致だけでなく、名義の表記ゆれ(法人名の省略・個人名のカナ表記など)を吸収できるルールを設計。機械的に「一致」と判定できる範囲を広げていきました。
一致しなかった分だけ、人が確認する運用に
800件のうち約740件は自動で一致処理され、担当者が目視するのは残り約60件のみ。オーナーへの入金報告のタイミングも、毎月5日に前倒しできるようになりました。
苦労した点:名義の「ゆらぎ」を、どこまで自動で拾うか
最初のマッチングロジックでは、一致率が思ったより伸びませんでした。原因は、振込名義のパターンが想定より多様だったことです。カタカナ・漢字の表記違い、法人名の「株式会社」の有無、代理人名義での振込など、人間なら瞬時に「同じ人だ」と分かるものを、機械的なルールに落とし込むのに苦戦しました。
ここで焦って100%の自動化を目指すのではなく、「確実に一致するものだけを自動処理し、怪しいものは人の目に残す」という割り切りに方針転換したことで、精度を保ったまま運用がまわり始めました。無理に100%を狙わないことが、結果的に一番の近道でした。
導入後の変化
月初3日がかりだった照合作業は、確認が必要な約60件のみに圧縮されました。オーナー報告のタイミングが早まったことで、対外的な信頼にもつながっていると伺っています。何より、月初のたびに感じていた「終わらない照合作業」への不安から解放されたことが、担当者の方にとって大きな変化だったようです。